野球肘とは

野球肘は、特にピッチャーに多く見られる症状で、【野球の投球動作の繰り返しにより起こる肘の痛み】です。
投球する際、肘に痛みが発生して投球が困難になったり、肘の痛みや肘が伸びない等、日常生活にも影響を及ぼす運動障害となります。
野球肘の原因は、【投球フォームの問題や過度の投球】です。

野球肘の見分け方

ピッチングフォームで最も腕の筋肉に捻じれや負担がかかるのは、【ボールを離す瞬間】です。
投球フォームの問題や過度の投球で筋肉が固まり、捻じれた状態が戻らなくなります。

腕が捻じれている状態なのかを判断するには、【肘と手首の位置】を確認しましょう。
野球肘の場合は、力を入れずに腕を床に投げ出した時に必ず手首が内側に捻じれています。

なぜ痛くなるのか

原因は腱が固まること

筋肉には伸び縮みを感知する筋紡錘というセンサーがあり、筋肉が過剰に伸ばされた時に脊髄に信号を送ります。
すると、脊髄は伸ばされた筋肉が断裂することを防ぐために、筋肉を収縮する信号を送り、その信号を受けた筋肉は収縮します。
この現象を【伸長反射】といいます。

腕が捻じれるような投球フォームで投げ、筋肉が過剰に伸ばされると伸長反射が働き、収縮した筋肉が戻らなくなり、筋肉の端である腱が固まってしまいます。

痛みの原因

骨際であるため、ほとんどの方が骨が痛いと間違われます。
レントゲンでは異常はなく、痛みの原因がわからないのは腱が固まっているためです。
筋肉が固まると伸び縮みをすることができなくなり、筋肉内の血管が圧迫されます。

すると、筋肉の細胞に血液の酸素・栄養分を運ぶことができなくなります。
細胞は酸素・栄養分を補給してほしいと合図をだします。それが痛みの成分です。

痛み止めでは根本的な原因の解決にはならない

人間には全身に神経が張り巡らされており、神経の先端部にある受容器というセンサーで熱さ・冷たさ・かゆみ・圧力・痛み等を受けて神経を通じて脳で感じ取ります。
このうちの痛みのセンサーが痛みの成分を受けて、【脳で痛い】と感じているのです。

痛み止めは痛みの神経を麻痺させるため、薬が効いているときは痛みを感じなくなりますが、効果が切れると痛みがでてきます。
これは筋肉が固まっているという根本的な原因に対処していないからです。

野球肘は筋肉の炎症ではない

一般的に野球肘は筋肉の炎症と言われてますが、生理学的には【伸長反射による筋肉の硬直】であり、炎症ではありません。
筋肉が固まった状態で投げ続けると筋肉のつけ根の骨を引っ張り、最終的に骨が剥離してしまいます。
剥離してしまうと骨がくっつくまでに時間を要するため、野球肘は痛くなったら早めの対処が必要です。

肘が痛くなったら

肘が痛くなった場合、まずは整形外科を受診しましょう。
骨の剥離や関節ネズミといわれる骨の小片が動く様な症例の場合もあります。
レントゲン・CT・MRI検査を行い、骨に異常があった場合は整形外科で治療していただくことをおすすめいたします。

骨に異常があった場合は、当道場での施術で改善することはできません。
骨に異常がなく、筋が原因と考えられると言われた場合のみ腱引き療法での対応が可能です。

一般的な療法

整形外科や整骨院での一般的な療法は、一定期間、投球数を制限する保存療法が主体となっており、症状が落ち着くまで約3週間ほど、投球を中止し、経過を見ながら復帰させます。
この場合、患部に対してアプローチすることはなく、自然回復を待つだけです。

その他には、肘に対してマッサージする・冷やす・温める・電気等をあてるといった療法もあります。
これらの療法は、野球肘が筋肉の炎症であることを前提とした療法です。

筋整流法の施術

固まった筋肉を緩める

野球肘は炎症ではなく、筋紡錘の伸長反射により筋肉が固まってしまった結果引き起こる症状です。
この固める命令を解除しなければ筋肉は緩みません。

そのため、まずは緩める命令を出す必要があります。
腱紡錘のIb抑制という自原反射を使うことで固める命令を解除することができます。
腱紡錘は、腱に存在する【張力を感知する圧力センサー】で、過剰に腱が伸ばされた時に感知して脊髄に信号を送ります。
脊髄はそれを受けて腱が断裂するのを防ぐために、筋肉を弛緩する信号を送り、その信号を受けた筋肉は弛緩します。

筋肉が緩むことで痛み・可動域が広がる

筋肉が緩めば、血管を圧迫するものがなくなり、細胞に酸素・栄養分が十分に行き渡ります。
細胞が酸素・栄養分が満たされることで、痛みの成分を出す必要がなくなり、痛みがなくなります。
さらに制限のあった可動域も改善されます。

筋整流法でのアプローチ方法

筋整流法では腱を引く方法(腱に刺激を与える)と奥義技である剛引き(筋肉を緊張させた状態から腱を伸ばす)により、腱紡錘のIb抑制を働かせて、筋肉を緩める命令を出させて硬直を解除します。
剛引きでも痛みが残る場合は、奥義技の指入れ(奥深くの筋肉を一瞬で弛緩させる)で痛みにアプローチをします。

高校生以下であれば、1回の施術で野球肘の痛みの改善が期待できますが、長年固まっているご年配の方の硬直の解除には時間・回数がかかる場合があります。

高校生以下でも難易度が高い場合は時間・回数がかかることがあります。

野球肘の種類

野球肘は大きく分けて、内側・外側・裏側の3箇所に分類されます。

内側:比較的改善がしやすい

内側は、小指・薬指・中指・人差指の筋肉が上腕骨の内側上顆に付着しており、このつけ根が固くなります。

外側:大人の場合は改善に時間がかかる

外側は、親指側の筋肉が外側上顆に付着しており、このつけ根が固くなります。
この箇所はテニス肘とも呼ばれています。
大人でこの箇所を痛めた場合は、改善に時間がかかる場合があります。

裏側:難易度の高い施術

裏側は、上腕三頭筋のつけ根が固くなっているか、肩甲骨側の筋肉(棘下筋、小円筋、大円筋)が原因となります。

肘だけでなく、他の箇所にも影響を及ぼします。

筋肉はすべてつながっており連動して動いているため、腕が捻じれると、当然他の箇所にも捻れを引き起こします。
そのため、肘が痛いからといって肘だけを診るのではなく、体全体を見る必要があります。
野球肘になった場合、反対側の腰・膝に捻じれが発生しており、足首が固くなっています。

野球肩

野球肩も野球肘同様、【腕の捻じれ】が原因です。
腕が捻じれる投球をすることにより、上腕二頭筋の停止部の腱と腕橈骨筋の交差部が固まります。
この状態で投球すると、二頭筋起始の長頭腱・短頭腱が強く引っ張られます。
伸び縮みを感知する筋紡錘の伸長反射が働き、長頭腱・短頭腱が固まります。

肩には多くの筋肉がついてます。
二頭筋の腱が固まって動きが制限されると、他の筋肉がカバーしようとするため、本来以上の力が必要となり、他の肩の筋肉も固まります。
これにより肩の可動域が狭くなり、痛みが発生して野球肩となります。

野球肩の施術法は、腕の捻じれを取り、二頭筋停止と腕橈骨筋交差部を緩め、二頭筋長頭腱・短頭腱骨側のロックを解除し、他の筋肉のロックを解除するといったように、手順通りに行わないと改善が期待できません。
四十肩・五十肩も原因は腕の捻じれのため、野球肩と同じ施術方法です。